ゴールへ向かう三秒前

「風邪を引いてしまいました。私はそっちょくな性格なのに」

「漢字の読み方が違うし、風邪をひかないのは馬鹿の方だろう」

「どうしよう、こんな時間にアーケードにいるなんて」

「何言ってるんだ、学生の本分はベイブレードだろうが」

「靴も新しいの買ってもらったのに」

「そうだな、友人ができるといいな」

「練習してもいい?」

「どうぞ」

「こんにちは、年齢は19歳です。最後のティーンです」

「おいおい、19なのはお前のIQだろうが。まだお前は最初のティーンだ」

「まただわ、またよ。私うまくいかないの」

「まだだ、まだだよ。骨が折れた方が骨は強くなる」

「こんなモノトーンな世界」

「色をつけるのが肝要だ。まずは十人十色からだ」

「あなたと話すと楽しいわ、彩りがあるわ」

「よせよ、俺には花は咲かないんだ」

「そんな、根拠がないわ」

「根拠はないが、根も葉もあるさ」

「ここには犬も猫もいないのね」

「そりゃ、そうだ、落ち着いたカフェに温度はいらない。根っこさえあれば」

「あなたは強いのね」

「俺もお前も天元次第さ」

「あなたの顔、綺麗ね」

「ああ、俺は観葉植物だからな」

「まるで作られたみたい」

「ああ、俺は観葉植物だからな」

「あなたは気にならないの?」

「ああ、俺は観葉植物だからな」

「あなた、優しいのね」

「ああ、俺は観葉植物だからな」