選β
そいつはそこから自由になりたかった
俺は同じところに着くだけだ
そう言って紐を切った
その日からそいつは箱になった
開閉するだけの箱
周りはそいつを見て言った
不法投棄?遊具?オブジェ?
そいつは旅に出ることにした
電車に会いに行った
いいよね、君は一人でも電車だ
僕だって線路がないと曲がれない
車に会いに行った
いいよね、君は一人でどこへでも行ける
私は地面しか動けないよ
飛行機に会いに行った
いいよね、君は空も飛べる
我は助走が必要だ、君は垂直に動けるじゃないか
そうか、確かに垂直に動けるのは俺だけだ
紐を結び直し、彼は登り始めた
横を通ったヘリコプターが紐を断ち切る
そいつは底に落ちていった
そして放たれたその魂は
あらゆるものの周りに憑くようになった
朝起きて伸びをするとき
ボタンが押され
そいつは俺を動かす