Kind of kindness

主人公:特に拾おうと思ったわけではなく、近くに転がってきたからなんだろうと思って拾った的な

A:一つ果物を盗んだがもう一つは返した。利己的な優しさ

B:生粋の優しい人、だけど流されがち的な

C:優しいというよりは正しくありたい人的な

優しい人設立者:好奇心半分でやっただけ

前説の人:校長先生っぽい格好

 

 

前説の人「(注意事項など、云々カンヌン)遅れましたが、新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。これにて式辞を終わります。では、一同起立、礼。」

 

(最前に座る主とB、起立して礼をする)

 

前「では、以上です」

 

(周りざわざわorざわざわSE)

 

(両ハケからA、C客席から両手に分かれて客席をぐるっと一周しながら主とB登場)

 

主「入学式終わった〜」

 

主「しかし、驚いたな〜まさかスーツ着てるのが自分だけとは〜」

 

(歩くアクト)

 

設立(ハケ裏)「あっ!」

 

(下手からみかんコロコロ)

 

主「なんだこれ、みかん……?」

主「なんか貼ってある……QRコード?」

 

(設立、下手in)

 

設立「拾ってくださってありがとうございまーす」

 

主「ああ、はい、どうぞ」A「ほいよ、」B「どう……ぞ…」

C「こちら落とされましたよ」(それぞれ適当なタイミングで)

 

設立「いや、返さなくても良いですよ。それはあげます」

 

設立以外「え?」

 

設立「おめでとうございまーす、皆さんはグループ、“優しい人”に参加する権利を獲得しました〜」

 

主「どういうことですか?」

 

設立「私、昔からやってみたかったんです、果物落として拾ってもらうやつ」

 

A「その気持ちは分かるわ〜」

 

設立「実際に出来て心晴れやかです〜」

 

C「で、それとそのグループになんの関係が?」

 

設立「拾ってくれた人となんらかの縁を持ちたいなと思いまして」

 

B「意味が分からないわ……」

 

設立「それでは私は失礼しまーす、ドロン!」

 

(暗転、設立者ハケ

 

B「私、今無視されま」

 

(ドロン!の音)

 

(明転)

 

C「はあ……困るわ、私みかん嫌いなのよね」

A「お!これ、俺みかん好きなんだー、イェイ!」

 

A「え、じゃあちょうだい!」

 

(C目が合う。Cは少し嫌そうな感じの顔。A、Cから果物もらう)

 

主「あれ?さっき隣の席にいた方ですよね?」

 

B「え、ああ、はい」

 

主「ごめんなさい、僕汗っかきで。肩組むとき迷惑じゃなかったですか?」

 

B「いや、別に大丈夫でした……」

 

A「そこの二人は知り合いなの?」

 

主「さっきの入学式で隣同士だったという関係です」

 

A「じゃあ、ほぼ友達みたいなもんだね」

 

C「そんなことはないでしょう」

 

A「いやいや、隣の人の人となりは分かるでしょ」

 

主「あなた達二人はどんな関係なんですか?」

 

A「さっき、みかんについての意見でハモった仲だよ、ほぼ友達だね」

 

C「全然違います、というか内容は真逆だったじゃないですか」

 

A「え、でもタイミングは一緒だったよ?」

 

主「仲良いんですね……」

 

C「そんなことありません!」

 

(少しの間)

 

主「しかしなんだったんですかね、さっきの人は……」

 

C「怪しい感じでしたね……」

 

B「都会って怖いですね……」

 

A「QRコード読み込めたぜ!LINEのグループに繋がってるみたいだ」

 

主「なるほど……(少しの間)入り……ますか?」

 

C「はいりませんわよ、胡散臭いじゃないですか」

 

B「私もやめたほうがいいと思います……」

 

A「入ろうよ、なんか面白そうじゃん。大学生っぽいし。」(主と肩を組む)

 

B「え、じゃあ……入ろう…かな…?」

 

C「そもそも、あなたがこのグループに入る資格はないのではなくて?」

 

B「そうですよね……すみません!」

 

C「いや、あなたの方ではなくて……あれ?どこ行ったのかしら?」

 

A「しかくを取るなら〜〜ユーキャン!!」(近くのハケから出ていきた反対ハケから背後を取り、驚かす)

 

B「うわあ!」

 

C「くだらないことをしないでください。」

 

A「あんた、いやに不機嫌だねえ、どうしたんだい?」

 

C「私は見ていたんですよ、あなたがみかんを二つ拾ってそのうち一つを盗んだところを。」

 

A「え、そんなことしてないよー、まさか〜」

 

C「いや、私は確かに見ました、あなたがその右のポケットに入れるところを。」

 

A「あはは、見られてたか〜、ごめんごめん。でもあの人は僕たちにくれるって言ったんだからいいじゃないか」

 

C「それは結果論でしょ、あなたはそれを言われる前に盗んでいたじゃない」

 

A「でも俺が拾わなかったら側溝に落ちてたぜ。俺がいようといまいとみかんは返ってこなかった」

 

C「それを言うならあなたが拾おうと拾わまいとあのみかんはあなたのものにはなりえないわ」

 

B「喧嘩は! やめましょうよ……」

 

主「そうですよ、そんなに白熱することでもないでしょう」

 

A「だってよ、落ち着こうぜ」

 

C「あなた達は、まさかこの人の味方をするつもりなんですか!」

 

B「そういう訳ではないですけど……」

 

主「今ここで、それを議論したところでしょうがないじゃないですか、実際に今、みかんはこの人のものになっている訳ですし」

 

A「だってさ」

 

C「そうですか、では失礼します。」(足早に立ち去る)

 

(A、Cを掴む)

 

A「待ちなよ、どうせなんだからこの4人で校内探索しようよ」

 

A以外「え、」

 

A「どうしたんだよ、みんなして」

 

B「私たちの学部、キャンパス違うじゃないですか……」

 

主「ここの構造を知って意味ありますか……?」

 

C「それに今は新歓時期でキャンパス内混んでいますし」

 

A「え、キャンパスここじゃないの!?」

 

主「はい、我々のキャンパスはもっと山奥の田舎キャンパスですよ」

 

A「そんな〜〜〜〜 夢のキャンパスライフが〜〜〜」

 

C「そんなことも知らずに受験したんですか?まったく……」

 

(Aしばらく項垂れる、主はなんとなく介抱)

 

C「では」

 

(Cが去るのに被せるように)

B「でも! 何かしたいですよね。あれだけ人がいる中でみかんを拾った人間はこの4人しかいなかったわけですから……」

 

主「確かに、そうですね」

 

C「まあ一人は完全に不純な動機で拾っていましたけどね」

 

A「言ってくれるじゃない、そういうあんたはなんで拾ったのさ」

 

C「困っている人がいたら助けるのが人間の正しい在り方でしょう?」

 

A「ふーん、真面目だねえ、まあ実際にはあの人は困っていなかったわけだけどね」

 

主「今回みたいな場合は稀だと思いますけど」

 

B「そうですよ、あんな人は滅多にいないですよ……」

 

C「それに私の行動によってあの人は困った事態にはなってないじゃありませんか」

 

A「分からないよ、今回はそうなっていないだけで君の正しさは独りよがりかもしれないわけじゃん? 嘆きたい人を慰めたり、死にたい人を助けたり」

 

B「でも、その正しさに救われる人も、いると思います……」

 

主「そうですよ。そういう人間を大事に思う人だっていますよ」

 

A「いや、否定する気は微塵もなかったんだけどね、誤解させちゃったかな?ごめん、ごめん」

 

(少しの間)

 

A「あなたはなんで拾ったんだい?」

 

B「私は『あっ!』という声が聞こえたので振り向いたら、みかん落としていた人と目が合ったので……」

 

主「っぽいですね〜」

 

C「そういう言い方は失礼ではありませんか?」

 

B「別にいいですよ、言われなれていますし」

 

A「へー、まあ正直そんな感じはしていたけど。最後のあなたは?」

 

主「私は、視界の端にオレンジ色の物体が見えたので、なんだろう?と思って手にとっただけです」

 

C「じゃあ床に転がっていたものを拾っただけってことですか?」

 

主「そういうことに……なりますね……」

 

B「全員、理由が違うんですね……」

 

A「面白いね〜」

 

(少しの間)

A「で、結局この“優しい人”っていうグループに入る?俺はとりあえず入るだけ入ってみるかな」

 

C「私は入りませんよ、個人情報が漏れるのは嫌ですし」

 

B「私もやっぱり怖いのでやめておきます」

 

主「僕は家で考えてみます、サークルでもなんでもないただの集団って逆に価値のあるようなものである気がしますし」

 

A「ふーん、そっか。じゃ、解散にしようか」

 

B「思ったより皆さんいい人そうで、少し安心しました。」

 

C「あなたとは、また少し話したいです(Bを見ながら)、では」

 

主「さようなら〜。また会うことがあればよろしくお願いします」

 

【帰り道】

(暗転、ハケ近くで喋り喋ってる人にスポット当たってる感じ)

 

B「優しさってなんだろう、私は状況に、流された、だけ?」

 

A「そこそこ相手のためになればそれでいいんじゃないかな?」

 

C「正しさは人間を救ってくれると私は思っている」

 

主「僕は特に、何も考えず、ただの条件反射みたいなものだった」

 

B「私は本当に優しい人間なの?」

 

A「まあ、優しいと言われたなら、それはそれでいいかな」

 

C「正しさと優しさはきっと少し違うものなのだと私は思う」

 

主「優しい気持ちが伴っていない親切は優しさなのかな?」

 

全員「でも、あの時、なんだか暖かい、暖かい、そんな感じがしたんだ」

 

主「それは…春のせい…?それとも…?」

 

【学校】(椅子の方向は客席と同じ方向、喋るときは横を向き、顔が見えるように)

(主、上手in)

 

主「あれ?あなたはあの時の……」

 

A「奇遇だね〜」

 

主「あれ、隣にいるのは……」

 

C「彼が勝手に隣に座ってきただけです。それだけです」

 

主「なるほど〜」

 

(少しの間)

 

A「そうだ、君も入ってよ、あのLINEグループ」

 

主「えっ、あー、あの“優しい人”とかいうやつですよね?」

 

A「そうそう、今あの果物落とした人と俺の二人しかいなくてさ〜、この人(C)には断られちゃってさ〜」

 

主「なるほど、というか落とした張本人も入ってるんですね……」

 

A「そうなんだよ、同じこと気になって本人に聞いたら、人の優しさが分かるのもまた優しさだ、らしいよ」

 

主「あー、まあ確かにそうかもですね。そういうことなら私もとりあえず入ってみます」

 

A「よし、(Cに)というわけだけど改めてどうだい? これで半分も入ったぜ」

 

C「まだ半分しか入ってないじゃない、もう一人の子(彼/彼女)も入るなら考えます」

 

(主「おー」みたいな反応)

 

C「(主を見て)考えるだけですよ」

 

A「あの子の連絡先持ってないの?」

 

主「はい、残念ながら。でも普通持ってなくないですか?」

 

A「え、そう? 俺は隣の人と連絡交換したよ〜」

 

主「流石ですね……」

 

(少しの間)

 

A「さて(時計など確認)、これから必修の授業だねえ、楽だといいけど」

 

(C、カバンの中ガサゴソ)

 

C「すみません、筆記用具貸していただけますか?」(主の方見て)

 

主「ごめんなさい、今日シャーペンも消しゴムも一つしか持っていなくて」

 

A「ほらよ」(シャーペンを投げる)

 

C「いえ、あなたからは貰いたくないです、というかあなたも一本しか持ってないじゃないですか」

 

A「俺はいいよ、代わりにあとでノート見せてくれれば」

 

C「全く、あなたは……」

 

A「じゃあ、後で」

 

(C、Aの腕を掴む)

 

C「待ちなさい、ノートは見せてもいいわ、その代わりに授業はきっちり受けましょうね」

 

A「あはは、参ったな〜しょうがない、それでいいよ」

 

(C「まったく、初回からサボろうなんて良い度胸してますね」A「初回なんてガイダンスみたいなことしかやらないっしょ」的なセリフじゃないけど言ってそう)

(教授、入ってくるまたはハケ裏から声のみ)

 

教授「席は決まっているので、これの通りに座り直してください」

 

A「あ、俺席ここじゃん、ラッキ〜」

C「私の席は変わらないままね」

 

AC「え!?」

 

A「新学期早々運が良いな、俺たち」

C「新学期早々運が悪いわね」

 

主「あはは、やっぱり仲良いですね」

 

C「よーくーない」

 

主「へへ、すみません、あ、私、前の方です。では」

 

(A、主の腕を掴む)

 

主「なんですか?」

 

A「これからよろしくな」(手を差し出す)

 

主「よろしくお願いします、(握手するといいかなあ)あなたもよろしく(Cを見ながら)」

 

(主、前の方の椅子に移動)

 

主「隣の人はまだ来てないか……」

 

(B、上手in)

 

B「ギリギリだ、席はどこ……?あそこか、あそこだ」

 

(B、主の隣に座る)

 

主「ありゃ、こりゃまた奇遇だ」

 

B「うわあ!」

B「すみません、びっくりして」

 

主「これからよろしくお願いしますね、実はあの時の4人、全員同じクラスにいるんですよ。しかし驚いたなあ、あなたの名前って」

 

教授「では、授業を始めたいと思います」

 

B「あ、授業、始まりますよ、その話は、後で聞かせてくださいね」

 

主「そうですね、すみません」

 

B「はい、ではこれからよろしくお願いします」

 

 (おわり)