スピーカ

前書き:スピーカーは日本語だと拡声器というらしいです。拡声器というと所謂メガホンのイメージがあるので意外でした。もしかすると声を拡張する、という意味なのかもしれないですね。

英語だとSpeakerだと話者のこととややこしいのでloudspeakerと表記するそうです。区別のためとはいえ、名前にloudってつけられるのやや可哀想ですよね。アホウドリ、みたいで。

 

スピーカー:スピーカーだよ、声だけの出演、ある日喋れるようになった

ウケイレ(卯景玲 うけいれい):主人公的な人、気弱に見えるけど出るとこでは出る感じ

コワガリ(小和賀理奈 こわがりな):怖がり、慣れたら大丈夫だけど慣れるまでビビり的な、下+くん呼び

ウタガイ(宇田凱):なんかしら疑ってしまう、ノリはチャラめ、下タメ呼び、多分サッカー部

シッタカブリ(漆田冠):知ったかぶりをする、やや真面目だが見栄っ張り、苗字+くん呼び、学級委員と図書委員を兼任してそう。

キヅカヌ(木塚縫 きづかぬう):気付かない人。

 

【第一場】とある通学路の真夜中

 

スピ「俺は喋るのが好きだ。喋ると、自分の声が反響して、周りの風景が何となく見える気がする。人に喋らされることもあるけど、別に気にはならない。だって俺はシャベルじゃなくてスピーカーだから。」

 

【第二場】とある通学路

 

(ぼんやり明転)

 

スピ「いやー、物心がついたときは混乱したんだけど、少し落ち着いたらだいぶ暇になってきたな。ここどこだよ?とか、今どういう状況だ?とか、分からないことが多すぎて逆に考えることもないしな。暇すぎて誰もいないのに自己紹介とかしちゃったよ」

 

スピ「それにしても肌寒いなあ……人の家に入りたいもんだぜ」

 

(コワガリ、上手イン)

 

スピ「ちょっと、君!そこの君!」

 

コワ「え!何!?」

 

(周りキョロキョロ)

 

コワ「びっくりした〜」

 

(もう一度キョロキョロ)

 

コワ「なんだろ、空耳? 怖いな、早く帰ろ」

 

スピ「おいおい、ここだって!」

 

コワ「え、何々何? お化け? 怖いよ〜」

 

(コワガリ小走りで下ハケ)

 

スピ「俺はお化けじゃないよ!」

 

(シッタカ上イン)

 

シツ「今日も勉強大変だったな〜」

 

スピ「お、こいつは頭良さそうだな」

 

スピ「やあやあ、そこの君!」

 

シツ「なんですか?」

 

スピ「あの、お願いがあるんだけど」

 

シツ「お願い?」

 

スピ「助けて欲しいんだよ」

 

シツ「どういうこと?」

 

スピ「……ここ寒いんだよね、暖かいところに連れていってくれないか?」

 

シツ「え? 君機械だよね? 機械ってこの程度の寒さじゃ困らなくないか?」

 

スピ「おいおい、機械差別か? 機械だって暖かい方が嬉しいんだよ」

 

シツ「……」

 

シツ「最近のAIは進歩(進化)してるな〜」

 

(シッタカ下ハケ)

 

スピ「俺はAIじゃないよ!」

 

(ウタガイ上手イン)

 

ウタガイ「今日も部活楽しかったな〜〜百人抜き!ってな」

 

スピ「おー、ノリいいやつ来たぞ」

 

スピ「おーい、そこの君!!」

 

ウタ「え? うるさいな 今のいいとこだったのに というかスピーカーが喋った?」

 

スピ「喋るよ、俺はスピーカーだからな。でも、俺はただおしゃべりがしたいわけじゃない。助けて欲しいんだ」

 

ウタ「機械が人に助けを? 幻聴か、これ」

 

スピ「あっはっは、幻聴とこんなに会話噛み合うと思うか? 信じろよ」

 

ウタ「うーん、確かにそれもそうだな。じゃあ信じるとして、助ける、って具体的に何すればいいわけ?」

 

スピ「とりあえず、俺を暖かいところに連れて行って欲しいかな、できれば家とかがいい」

 

ウタ「あ……もしかしてこれドッキリか? カメラどこにあるんだろ〜」(スピーカーを持ち上げる)

 

スピ「ちょっ持ち上げないで、やめ、やーめろ、カメラはないって、俺はスピーカーなんだから!」

 

ウタ「分かりました、分かりましたよ。じゃあ僕はこれ以上絡まないので、うまいこと、カットしといてください。カットしといてください(客席見ながら)」

 

(ウタガイ下ハケ)

 

スピ「あー、待って……」

 

スピ「でも少しずつ良い感じになってきたな、この調子なら……っておお来たぞ」

 

(キヅカヌ上手インスピーカーの前で立ち止まってしゃがむも靴紐を結ぶだけ。その後歩いて下ハケ、スピーカーもしもし?などの言葉を投げかける)

 

スピ「ってここで素通りかーい!」

 

スピ「このままだとまずい…… 次は今までの反省を生かして……」

 

(ウケイレ上イン)

 

スピ「やあ〜、そこの君! こっちこっち!」

 

ウケ「え? はい?」

 

スピ「驚かないで聞いてくれ」

 

ウケ「はい」

 

スピ「俺はお化けでもAIでもないし、これはドッキリ番組の企画でもない。」

 

ウケ「はい」

 

スピ「で、俺はあなたにお願いがある」

 

ウケ「はい、なんでしょう」

 

スピ「ここ寒いんだよね、ここにいると動かなくなっちゃうから暖かいところに連れていって欲しいんだ」

 

ウケ「はあ、なるほど」

 

スピ「まあそういうことだから、よろしく頼むよ」

 

ウケ「いいですよ、うちにきましょう」

 

スピ「え、本当に? こんなにすんなり受け入れる人いる? 逆に怪しいな」

 

ウケ「じゃあやめておきますか?」

 

スピ「あー、いや、そういう意味ではございません。ありがとう、これからお世話になる人だ。名前を教えてくれ」

 

ウケ「ウケイレイ、レイでいいよ。」

 

(ウケイレ、スピーカーを持つ)

 

(フェードアウトの後フェードイン)

 

【第三場】家その1

(スピ、テンション高く喋っている)

 

ウケ「とりあえず、ここにいて。ちょっと狭いけど」

 

スピ(録音)「わかった」

 

ウケ「風呂入ってくるから」

 

スピ(録音)「わかった」

 

ウケ「静かに、するんだぞ」

 

スピ(録音)「わかった」

 

ウケ「さっきから同じ音声使いまわしてないよな?」

 

スピ「わかった(録音)使いまわしてないよ」

 

ウケ「おい」

 

スピ(録音)「すみませんでした」

 

ウケ「分かればいいんだよ」

 

スピ(録音)「すみませんでした」

 

ウケ「すみませんでした以外の言葉で謝ってみて?」

 

スピ「すみませんで(録音)ごめんなさい」

 

(ウケイレ、スピーカを見る、少し間)

 

スピ「まことに申し訳ありませんでした」

 

ウケ「楽しようとするなよ」

 

(ウケイレ上ハケ)

 

スピ「わかった」

 

スピ「いやー、受け入れ先が見つかってよかった」

 

スピ「でも、静かにしろってひどいよな、俺はスピーカーだぜ? 喋ってなんぼじゃねえか」

 

スピ「静かにしろ、って言われると少し騒ぎたくなるのがスピーカーの性ってやつだよな」

 

スピ「それでは参りましょう、第一回チキチキ声出してみようレース!」

 

スピ「この競技は家主にバレないようにできるだけ声のボリュームを上げていく種目で」

 

スピ「あ、あ、もうちょいいけるな」

 

スピ「ああーあー、もうちょい攻めてみよう」

 

スピ「ああーあーあー」

 

スピ「よし、MAXの声で行こう」

 

スピ「せーの」

(ウケイレ上イン)

 

ウケ「静かにしてたか〜」

 

スピ「はやっ、ちゃんと体洗ってるのか?(小声)。もちろんですとも」

 

ウケ「じゃ、寝るから。おやすみ〜」

 

スピ「はやっ、と言うかもう少し俺に興味持ってもいいんじゃねえのか? って寝た!?」

 

スピ「暇だな……少しくらいなら怒られないか」

 

(照明フェードアウト、やや明かりは残るスピーカに当てる感じ)

 

スピ「今日のラジオコーナ〜」

 

スピ「ラジオネーム、乙女座の一等星さんからの投稿です。」

 

スピ「筋肉をつけたいです。圧倒的なパワーで音より速いものを止めたいです。どれくらい鍛えたらそうなれますか? 乙女座の一等星さん、素敵なお便りをどうもありがとう、自分を高(める心がけ、素晴らしいと思います)」

 

ウケ「こらこら静かにしてくれよ。」

 

スピ「すみませんでした」

 

スピ「ていうかその体勢でよく寝られるな」

 

(照明フェードアウト)

 

(照明フェードイン)

 

(ウケイレ、起き上がる)

 

ウケ(独り言ヴォイス)「お〜、久しぶりに自分で起きたなあ」

 

スピ(録音)「起きろ!」

 

スピ、ウケ「わっ!」

 

ウケ「起きてるよ、てか、なんで自分で驚いてるんだよ」

 

スピ「自分の声を目覚ましにしてるんだ、寝てから9時間後にセットしてて」

 

ウケ「へー、便利だねえ」

 

スピ「なんなら1分後とかにも設定できるよ、やってみるね」

 

ウケ「ふーん」

 

ウケ「そういえばさ、スピーカーって日本語でなんていうんだろうね?」

 

スピ「なんだろう、分からないな」

 

(ウケイレ、ポチポチ)

 

ウケ「拡声器って言うのか、へー」

 

スピ「この声は俺の等身大の思いなのにさ」

 

ウケ「……」

 

(少しだけ間)

 

スピ「起きろ!」

 

ウケ「フッ」

 

スピ、ウケ「ハハハハハ」

 

スピ「そういえば、時間大丈夫なの?」

 

ウケ「え、寝てから9時間後ってことは今7時すぎたくらいでしょ? まだ余裕だよ」

 

スピ「ごめん、あの後寝付けなかったから…… 今は7時45分だよ」

 

ウケ「え! 遅刻する! 急がなきゃ! じゃあね!」

 

(ウケイレ、諸々の準備をちゃちゃっと済ませてから上ハケ)

 

【第四場】学校

 

(コワガリ、シツタカ、下イン)

 

(ウタ上イン)

 

ウタ「昨日さ、帰り道にドッキリ? 的なやつに遭遇したんだよ!」

 

コワ「えー、どこで?」

 

ウタ「ほら、大通り曲がって直ぐの、」

 

シツ「ショートカットで使う」

 

ウタ「そうそう」

 

コワ「あれ、ドッキリだったのか〜 本物のお化けかと思ったわ〜〜」

 

ウタ「え? お化けのドッキリじゃなくてスピーカーが話しかけてくるドッキリだったよ」

 

コワ「何それ、スピーカーが話すのは当たり前じゃないの?」

 

ウタ「いやいや、生きている感じで話してきたよ。あ、まさかお前、怖いよ〜、みたいな感じで逃げ出したのか? こりゃ傑作だぜ、コワガリナ君。絶対オンエアされるよ」

 

コワ「うわー、やば、はずかし〜、あ〜、マジか〜」

 

シツ「いやいや、それは違うよ、ウタガイ君。もし、ドッキリだったらネタばらしが直ぐにあるはずだろ? それがないってことは、あれはドッキリじゃなくてAIか何かってことだよ」

 

ウタ「いやいや、何をおっしゃるシッタカブリさん。いまどきのAIはあんなに柔軟に喋れないでしょ」

 

シツ「いやいやいや」

ウタ「いやいやいや」

 

(ウケイレ、上イン、歩きながら)

 

ウケ「しかし、一定時間後に声飛ばせるのすごいよなあ…… 同じことを人間がやろうとしても結局は喋る直前に、『喋ろう』と思ってから喋ることになるもんなあ……」

 

コワ「あ、玲くん。どうしたの?」

 

ウケ「いや、人間って『喋ろう』と思わずに喋ることってできないよね、みたいな」

 

コワ「え? どういうこと?」

 

ウケ「あ、ごめんごめん、こっちの話。 (二人見て)ところで、二人は何を嫌がっているの?」

 

コワ「いや、二人は嫌がってるんじゃないよ。昨日、ショートカットの道にスピーカーがいたらしいんだけど、それがAIかドッキリかどっちだ、で揉めてる。」

 

ウケ「へ、あ〜〜、ほ〜〜、なるほど」

 

ウタ「聞いてくれよ、カブのやつ、自分の意見ばっかりで、全然話聞かないんだよ」

 

シツ「確たる証拠を突きつけたのにウタくんが全然認めようとしないんだよ」

 

ウタ「玲もドッキリ番組だと思うだろ!?」

シツ「うけい君もAIだと思うだろ!?」

 

ウケ「まあ〜どっちの可能性もあったりなかったりするんじゃないかな〜〜」

 

(キヅカヌ、下イン、四人の周りを小走りで通り過ぎ、上ハケ)

 

コワ「あれ、ヌウくんだ。次の授業移動みたいだよ」

 

シツ、ウタ「え、やば!」

 

ウケ「ほらほら、行かないと〜〜」

 

(ウケイレ、上ハケ)

 

ウタ「今日の放課後確かめに行くからな」

 

シツ「望むところだ」

 

(残り3人も上ハケ)

 

(薄暗くなる)

 

【第五場】とある通学路 再、家 再

 

(コワガリ、ウタガイ、シツタカ上イン)

 

コワ「ちょっと怖いよ、やめようよ」

 

ウタ「スピーカー相手に何ビビってんだよ、」

 

コワ「分かっていても少し怖いよ、そういうもんだよ」

 

ウタ「じゃあしょうがないから、そこで見てな。ここでカブとの決着着けるところをよ。」

 

シツ「そうさ、この調査でどちらが真相を語っていたのか、明かそうじゃないか」

 

コワ「あーもう、ヌウくんも玲くんはなんでいないんだよー」

 

ウタ「ヌウはいつも気付いたらいないけどさ、玲は授業終わって直ぐに帰るなんて、付き合い悪いぜ」

 

シツ「伝えてなかったんだからしょうがないだろう、それより、ほら、さっさと調べるぞ」

 

ウタ「確か、この辺だったよな」

 

シツ「うむ、私もこの辺で見た」

 

コワ「見当たらないね……」

 

シツ「ないみたいだね」

 

ウタ「ってことはここでのドッキリはもう回収されたってことか」

 

コワ「それなんだけど、さっき調べたら、テレビのドッキリは必ずネタバラシしないといけないみたいだよ」

 

ウタ「え、ドッキリじゃないのか。じゃあ誰かが持って行ったとか、そんなとこじゃね?」

 

シツ「いやいや、あんなものを持って帰る人なんていないでしょ」

 

ウタ「でもAIなんて便利なものなら誰か持って行っちゃうんじゃね?」

 

シツ「ペチャクチャ喋る変なAIを欲しがる人なんかいないだろう。それに、私は自習をしていて最後まで学校に残っていたんだ、そのとき外はだいぶ暗かったし、そもそもこの道はうちの生徒くらいしか使わないでしょ」

 

コワ「まさか本当にお化けだったんじゃ……」

 

(キヅカヌ、上イン3人を通り過ぎて、下ハケ)

 

ウタ「あれ、ヌウじゃね?」

 

シツ「普段から通っているのかな?」

 

コワ「話を聞いてみようよ」

 

(ウタ、シツ、コワ3人下ハケ)

(同時にウケイレ、上イン)

 

ウケ「いい湯だった〜」

 

スピ「スーハースーハースーハー」

 

ウケ「うわっ!」

 

スピ「お、どうした?」

 

ウケ「今の音何? というか何してんの?」

 

スピ「息の練習だよ、息吸う音がある方が親しみも湧くかなあと思ったんだけど、普段呼吸してないから練習してるわけ。どうよ?」

 

ウケ「なんか違う、ちょっと怖いし」

 

スピ「そうか、もっと研究する必要があるな……」

 

ウケ「そんなことよりさ、一定時間後に声を飛ばす機能を応用して、逆一人聖徳太子、できるんじゃないの?」

 

スピ「逆一人聖徳太子?」

 

ウケ「ほら、聖徳太子って一度に十人の話を聞いたって逸話あるでしょ、でも君は一度に十人分の話をすることができるわけじゃん? そういう感じの」

 

スピ「なるほど。俺が一度に複数の単語を言うから、それをレイが当てるっていうルールの遊びだな?」

 

ウケ「そうそう。じゃあ逆一人聖徳太子の準備をお願いします」

 

スピ「いいけど、ちょっと時間かかるよ、っていうか聖徳太子は元々一人じゃない?」

 

ウケ「細かいことはいいの」

 

(しばらく間)

 

ウケ「まだ?」

 

スピ「ちょうど始ま」

 

スピ「ぶどう/れもん/りんご/いちご/みかん/きうい/ざくろ/ばなな/らいむ/すもも」

 

ウケ「…… 道理で時間かかると思ったよ。いきなりそんなにたくさん当てるのは無理でしょ、やや聖徳太子くらいから始めようよ」

 

スピ「ごめんごめん、やや聖徳太子、ね、やや。じゃあ次は3つくらいにするよ」

 

ウケ「よろしく」

 

スピ「だんご/ごぼう/あいす」

 

ウケ「だんごとあいすとごぼう、かな?」

 

スピ「正解」

 

ウケ「他にも問題出してよ。」

 

スピ「そういうと思ってもう3秒後に用意してあるよ」

 

スピ「(もう一問)」 (電気/微分/こけし)

 

ウケ「(正解する)」

 

スピ「2問連続で正解するとは、なかなかやるな。でも次の3問目は少し難しくしたからな、簡単には分からないぜ」

 

ウケ「眠くなってきたし、寝るわ」

 

スピ「おい、レイがやろうって言い出したんだぜ? もう少し遊ぼうぜ」

 

ウケ「おやすみ〜」

 

スピ「5秒後にもう準備できてますよ〜、ってダメだ、もう寝てやがる、相変わらず変な寝方だな」

 

(暗転)

 

スピ「(3問目、五個5文字)」 (アンタレス/鏡餅/文化の日/玉手箱/自然数)

(ウケ、下ハケ)

 

【第六場】とある路地

 

(照明フェードイン)

 

(ウタ、シツ、コワ上イン)

 

シツ「見失ったね……」

 

ウタ「見つけたと思ったらすぐいなくなる、の繰り返しだったな」

 

コワ「まるで忍者みたいだったね」

 

ウタ「どうしよう、土日挟むから次会えるの月曜日だよ、」

 

コワ「ヌウ君の家知ってる人いないの?」

 

シツ「3ヶ月前に引っ越したらしいんだけど、それから家に遊びに行ってないから分からないな」

 

ウタ「見つからないなら、もう諦めて、他の手がかりを探すしかないよ」

 

コワ「でも他の手がかりなんてないんじゃない?」

 

シツ「ドッキリとかAIとかでうちの高校の生徒のSNSをサーチしてみればいいんじゃない? スピーカーを見た人がいれば、絶対に何かしら発信してるはずだよ」

 

ウタ「どうだろう、そもそも君より後に他の生徒は通ってないと主張していたのは君自身じゃないか」

 

コワ「今、パッとサーチしてみたけど、僕たちの知り合いで出くわした人はいないみたいだよ」

 

シツ「じゃあ駅前の電気機器を扱っている店を探すのはどう? ここから一番近いし、何らかの情報が手に入るだろうし」

 

ウタ「確かに……!たまには冴えるじゃないか、早速行こうぜ!」

 

コワ「今から行くの!? 今日はもう遅いし暗いから明日にしようよ」

 

シツ「しょうがないなあ、じゃあ、明日9時に駅前に集合にしよう、それくらいなら店も空いているだろうし」

 

ウタ「オッケー」

 

コワ「じゃあまた明日」

 

(ウタ上ハケ、コワ下ハケ、シツ客席の方に歩く)

 

(暗転)

 

【第七場】朝の駅前、朝の家

 

(人混みSE)

 

(明転)

 

(シツ、板付)

 

シツ「もう9時45分だってのに、なんで私しかいないわけ!? 店も開いてないし」

 

(コワ下イン)

 

コワ「ごめん、寝坊しちゃって……」

 

シツ「いいよ、まだウタくんは来ていないし、店開いてなかったし。でも、寝坊なんて珍しいね」

 

コワ「もしかしたらお化けかも、って思ったら眠れなくて」

 

シツ「本当に怖がりだなあ。でも大丈夫だよ。今日こそ真相も分かるだろうし」

 

コワ「そうだといいけど……ガイくん、来てないんだよね。もしかして呪い的な何かかも」

 

シツ「あいつに限ってそれはないって。いつも時間通りには来ないじゃん。」

 

コワ「でもガイ君、いつも15分くらい遅れる程度で、大幅に遅れることなくない?」

 

シツ「確かに、いや、でもまさかなあ……」

 

(ウタ上イン)

 

ウタ「やあ、おはよう」

 

シツ「遅い」

 

シツ「よかったね、呪いはなさそうだよ」

 

コワ「からかわないでよ〜」

 

ウタ「あ、まだお化けを怖がっているのか」

 

コワ「うるさい、というかなんで遅刻したわけ?」

 

ウタ「ああ、それは電気屋って9時なんて早い時間からやってないよなあ、と思って家で調べたらやっぱり10時だったから集合場所に行くの9時40分くらいでいいかなあ、と思って」

 

シツ「はあ!? じゃあ私たちにも連絡しなさいよ!」

 

ウタ「ごめんごめん、そういうドッキリかなあ、と思って」

 

コワ「そんなしょうもないドッキリ、誰も仕掛けないよ」

 

ウタ「それは分からないだろ? それに警戒しておいて損ってことはないからな。お? 少し早いけど、もう開いてるみたいだ」

 

(ヤマダ電機偽BGM byスピーカー)

 

(三人下ハケ)

 

(ウケ上イン)

 

ウケ「その曲、どっかで聞いたことあるな……」

 

スピ「そりゃそうだろうな、全国展開してるからな」

 

(少し間)

 

ウケ「ところでさ、君はそもそもなんであんなところにいたわけ?そろそろ聞かせておくれよ」

 

スピ「それがな、今の俺、つまりこうして自由に喋ることができる状態になった俺のことなんだが、が誕生したのがあそこに置かれてからなんだよ。それ以前の記憶は所々おぼろげにしかないんだ。だからなんであそこにいたのかはよく分からないんだよね」

 

ウケ「そうなのか」

 

スピ「まあ、過去のことは別にいいじゃねえか、それよりもっと色んな人間と話がしたいぜ」

 

ウケ「人とおしゃべりしたいのかい? いいよ、土日明けたら学校の友達連れてくるよ」

 

スピ「待ちきれねえなあ」

 

ウケ「……あっ、思い出した。さっきの曲。駅前の花子電気の店内BGMだよ。なんだ、あれかホームシック的なやつか。そうだよな、お前、スピーカーだもんな、可愛いやつめ、連れていってあげるよ」

 

スピ「ちょ、そういうのじゃないって、やめろ、息が、モゴゴ」

(ウケ、スピーカーを黒い幕的なもので包む)

 

ウケ「普段は息しないのに、変なアピールしないの」

 

(ウケ、何かの袋にスピーカー入れて上ハケ)

 

【第八場】昼の電機店

 

(ウタ、シツ、コワ下イン)

 

シツ「結局手がかりは見つからなかったね」

 

ウタ「いやいや、そのようなAIはまだ市場には出回ってないという話が店員から聞けたじゃないか、これは大きいでしょ。君の説も正しくなさそうと分かったわけだし。」

 

シツ「いや、しかし、そうなると……」

 

コワ「残るはもうお化けだけだよ〜」

 

ウタ「お化けはないんじゃない? 俺、あれに普通に触(さわ)れたし。それよりもむしろ宇宙人とかの可能性とかの方がまだある気がする。」

 

コワ「宇宙人!? それもそれで怖いよ……」

 

ウタ「それはそれとしてお腹空いたし、昼ごはん食べに行かね?」

 

(ウケ、この辺で上イン、上側で様子見)

 

コワ「うん、僕もお腹空いてきたから何か食べたい」

 

シツ「全く、神経が太いんだか細いんだかよく分からないね」

 

(ウタ、シツ、コワ「何食べるー?」みたいなこと言いながら上ハケ)

 

ウケ「あの三人、まだやってるのかなあ。」

 

スピ「モゴゴモゴ」

 

ウケ「なんだなんだ? 大声だけは出さないでくれよ?」

 

スピ「今の三人、レイに会う前に会った奴らだろ? 何してるんだ?」

 

ウケ「うん、多分そうだよ、彼らは君の正体について調査してるみたいだよ。 それにしてもよく声だけで分かったな」

 

スピ「そりゃあ、なんたって俺はスピーカーだからな」

 

ウケ「土日明けに連れてこようと思ってたの、彼らなんだけど、どう? 俺が間取り持つからさ」

 

スピ「どうせなら、早い方がいいな、今日とか。」

 

ウケ「ほんと? じゃあ追いかけようか」

 

スピ「いや、電気店回ってからでいいよ、また外出ることになるのはごめんだし。ほら、太陽光とか苦手なんだよね。シールにも書いてあるだろ? 直射日光はお控えください、って」

 

ウケ「それってそういう意味だったのか〜」

 

スピ「それに、最近の若いのはスマホ、とかいうやつですぐ連絡取れるんだろ?」

 

ウケ「確かにそうだね、とりあえず連絡だけはしておくよ…… よし、じゃあ行こうか」

 

(ウケ下ハケ)

 

【第九場】立ち食い牛丼屋

 

(「へいらっしゃーい」SEまたは、裏からキヅカヌが声出すとか)

 

(三人、上イン)

 

シツ「どこも混んでて空(あ)いてるのはここだけだね」

 

コワ「お腹空(す)いたね〜」

 

ウタ「空(す)いてるのに普通盛りでいいのか?」

 

コワ「僕小食だから」

 

ウタ「ふーん、そうか」

 

シツ「そういう君もお腹空いてるとか言ってた割に普通盛りじゃない」

 

ウタ「大盛りにすると肉と米の配分が難しいんだよね」

 

シツ「何よそれ、まあいいや、私も普通盛りにしようかな」

 

(食うところへ歩く)

 

(「牛丼一丁、牛丼一丁、牛丼一丁」ハケorSE)

 

ウタ「牛丼3丁でよくね?」(独り言)

 

コワ「レイくんから、今どこいる? だって」

 

ウタ「またない屋にいるって言っとけ」

 

(ここで右から順番に牛丼来るのでどうも、的な感じで)

 

(こっから適宜牛丼を食べるアクト)

 

(コワ、写真撮る)

 

コワ「なんてタグ付けしようかな」

 

シツ「牛丼って英語でなんていうか知ってる?」

 

ウタ「え、beef bowlだろ?」

 

シツ「違うよ、ビーフ、丼だよ」

 

ウタ「ビーフ、丼?」

 

シツ「そう、丼はもう日本語のまま伝わっちゃてるんだよね〜、モッタイナイとかカロウシみたいに」

 

コワ「そうなんだ、じゃあビーフ、丼でタグ付しておこうか」

 

ウタ「そうだったかなあ……」

 

ウタ「で、この後どうする?」

 

シツ「どうする、って言っても」

 

コワ「もうあとは宇宙人くらいしかないし、UFO博物館とか行く?」

 

ウタ「近くにそんなのある?」

 

(ハケ裏から「はい、いつもお疲れ!」キヅカヌが言ってもいいんじゃないかな)

 

(キヅカヌ(バンダナ)、下イン三人の後ろを通って上ハケ)

 

コワ「あれ、ヌウくんじゃない? ここでバイトしてるんだね」

 

(ウタ、慌ただしく牛丼を食い尽くす)

 

コワ「どうしたの? ゆっくり食べた方がいいよ?」

 

ウタ「何ぼーっとしてるんだよ、ヌウ捕まえるぞ、昨日のリベンジだ」

(この間にシツも食い終わってごちそうさまでしたと小さく言うなりしてください)

 

シツ「よし、行きますか」

 

コワ「二人とも食べ終わるの早くない!?」

 

ウタ「おい、また逃げられちまうぞ」

 

コワ「ちょっほまっへ」

 

ウタ「先行ってるぞー」

 

シツ「ごめんね、コワちゃん」

 

(ウタ、シツ上ハケ)

 

コワ「あーもう、二人とも、ヌウくん追いかけてどうするつもりなんだろう……」

 

(コワ食べ終わってから上ハケ)

 

【第十場】 牛丼屋近く

 

(ウケ下イン)

 

ウケ「どう? 懐かしかったか?」

 

スピ「前も言ったけど、うっすらとした記憶しかないから、そういうのはないって。でもまあ、人がたくさんいて面白そうな場所ではあったな。」

 

ウケ「また行くか」

 

スピ「まあ晴れてなければな。それより連絡きてないか?」

 

ウケ「わかった。あっ、連絡きてたわ。さっきの3人組、すぐそこのまたない屋にいるってさ」

 

スピ「そうかい」

 

ウケ「緊張してるの?」

 

スピ「まさか、俺はスピーカーだぞ?」

 

ウケ「なんだよそれ、関係なくないか? まあいいけど。行こうか」

 

(コワ上イン)

 

コワ、ウケ「あっ!」

 

スピ「この声、あの時のヘタレだな!」

 

コワ「ヘタレ? っていうかこの声あの時のお化け!?」

 

スピ「ここだよ、ここ」

 

コワ「昼間からお化けなんて勘弁だよ〜」

 

スピ「スーハースーハースーハー」

 

ウケ「落ち着いて。そして、お前も隠せ、息を!」

 

スピ「誰が拡声器だ、俺はスピーカーだ」

 

ウケ「それはごめん。 (コワに向かって)でな、こいつをお前に紹介したいんだ。こいつはお化けじゃなくて、」

 

コワ「そうだ、レイくん、そいつはお化けじゃなくて、もしかしたら宇宙人かもしれないんだ」

 

ウケ「宇宙人?」

 

(キヅカヌ(白パーカーフード被りおでこサングラス)、下イン)

 

(キヅカヌ、ウケコワの方を向く)

 

コワ「え、こっち見てない?」

 

(キヅカヌ、近付く)

 

コワ「なんか近づいて来てる、逃げよう!」

 

ウケ「え?」

 

(ウケ、コワ上ハケ)

 

(キヅカヌ続いて上ハケポケモンGOなどをしている)

 

【第十一場】 追い道

 

(ウタ、シツ下イン  走っている)

 

ウタ「リナのやつ、いなくなったな」

 

シツ「え、どうするの? 置いていくのは可哀想じゃない?」

 

ウタ「まあどうにかなるっしょ、後で連絡しとけば」

 

シツ「後、今追いかけてる人本当に木塚くんなの? パーカー着てたっけ?」

 

ウタ「着替えただけだろ? この距離で見失うわけないだろうし」

 

シツ「そうかなあ……」

 

ウタ「クソ、食ってすぐじゃなければもっと速く走れて、今頃捕まえてるっていうのに。それに、カブがさっき言ってた腹が痛い時の対処法全然効かないし」

 

シツ「え、私には効いてるけど」

 

ウタ「それプラシーボじゃねえのか? あ、左曲がった」

 

 (ウタ、シツ左に曲がる)

 

ウタ「おい、カブ、スピード落ちてきてるんじゃねえの?」

 

シツ「なにぃ?」

 

(シツ、ダッシュでウタ抜かす)

 

シツ「ウタくん、疲れたら休んでもいいんだよ?」

 

ウタ「ああん?」

 

(ウタ、ダッシュで追い抜かし、煽る)

 

(シツ、追い抜かし返す)

(2回くらい繰り返す)

 

シツ「また左!?」

 

(シツ、ウタその場で左に曲がる(ので、後ろを向いている))

 

シツ「え、これどっちに行ったんだ?」

 

ウタ「二手に分かれよう、先に捕まえたら勝ちで負けたらアイスおごりで。」

 

シツ「いいけど、道は私が先に選(ばせてもらうよ)」

 

ウタ「じゃあ俺こっち行くわ」

 

(ウタ、下ハケ)

 

シツ「勝手に決めるなっての」

 

(シツ、上ハケ)

 

【第十二場】 牛丼屋から離れる道

 

(ウケ、コワ上イン 早歩きくらいの走り)

(ウケ、スピーカ抱えている)

 

ウケ「なんで逃げてるわけ?」

 

(ウケ振り向こうとする、コワ止める)

 

コワ「振り向いたら、ダメ。君が持っているそれは宇宙人の子供的なやつで、きっと親的なやつが取り返しにきたんだよ」

 

ウケ「なるほどね、でも親御さんならこの子は返したほうがいいんじゃないのか」

 

(ウケゆっくりになりつつ後ろに下がり、立ち止まる)

 

コワ「ダメだよ、捕まったら子供だけじゃなくて私たちも連れていかれちゃうよ」

 

(コワ、ウケを前に押し出す)

 

ウケ「分かった、じゃあここに置いていくのはどう?」

 

スピ「ちょ、それはやめてくれよ。もっと人と話したいぜ」

 

ウケ「って言ってるけど」

 

(ウケ立ち止まる)

 

コワ「ほら、地球の情報を集めようとしてるよ、やばいって」

 

(コワ、ウケを前に押し出す)

 

スピ「いやいや、どう見ても俺は地球製のスピーカーだって。宇宙人だったらスマホとかに化けるだろ!?」

 

ウケ「って言ってるけど」

 

(ウケ、立ち止まる)

 

コワ「もういいから逃げて!」

 

(コワ、ウケを前に押し出す)

 

スピ「あんまり揺らさないでくれよ、酔う」

 

ウケ「って言ってるけど」

 

スピ「おい、さっきから音声使いまわしてるだろ」

 

コワ「いいから、それは、置いて」

 

ウケ「ごめん、後で迎えに行くから~」

 

(ウケ、コワ下ハケ)

 

スピ「待ってるよ〜」

 

(キヅ、上イン)

 

スピ「足音で分かるぜ、あんたあの靴紐結んでたやつだろ? 俺はスピーカーだからな もしもし? もしあの二人を追いかけているなら俺も連れて行ってくれないか? 頼むよ」

 

(キヅ、スピの前で立ち止まる)

 

スピ「今度こそ、気付いてくれたんだな」

 

(キヅ、靴紐を結び直す)

 

スピ「いや、靴紐はもういいよ、ていうかもっときっちり結んどけよ、二日連続でほどけるくらいなら、バリバリする靴にしとけよ」

 

(キヅ、下ハケ)

 

スピ「あー、また一人、いや、一台か。レイは迎えにきてくれるって言ってたけど、時間かかるだろうし、暇だな……」

 

(シツ、上イン)

 

シツ「追いつきそうなのに、追いつけない。まるで、アキレスと亀だよ」

 

スピ「いや、普通に追いつけてないだけだろ」

 

(シツ、スピを見る)

 

シツ「あ! あの時のスピーカー! でもごめん、今はあなたの正体のヒントを追いかけないといけないから!」

 

スピ「本末転倒!」

 

(シツ、その場でこける)

 

スピ「いや、そういう意味じゃねえよ」

 

スピ「落ち着いて考えろ? 本人、いや、本台ここにいるでしょ!?」

 

シツ「確かに。じゃあ正体について教えてよ。」

 

スピ「いいだろう、その代わり、俺をレイの元に運ぶのとその間の話し相手になってくれ」

 

シツ「あんたうけいくんと知り合いなの?」

 

スピ「まあそんなところだ」

 

シツ「分かったよ、ってことで教えて」

 

スピ「(咳払い)俺はな、スピーカーなんだ(イケボ感、セルフエコー)」

 

シツ「……え?」

 

スピ「どうした? 俺の美声に聴き惚れているのか?」

 

シツ「そんなことは見れば分かるよ、私たちが知りたいのはもっと本質的なところなんですけど」

 

スピ「本質も何も俺は自分で喋ることができるスピーカーってだけだよ」

 

シツ「うーん、釈然としないなあ……あ! そういえば木塚くん先に捕まえないとあいす奢りなんだった! 行かなきゃ!」

 

スピ「おいおい、約束は?」

 

シツ「でも君持って走ってたら、確実にウタくんに負けてしまうよ、後で来るから」

 

(シツ、行こうとする)

 

スピ「待ちな、街中でも俺ならあいつの足音を頼りに道案内することができるぜ、強力な助っ人、いや、助っカーになると思うぜ。どうだい?」

 

シツ「それは便利だね」

 

スピ「そりゃそうさ、何たって俺はスピ」

 

シツ「じゃあ行こう」

 

スピ「あ〜〜〜」

 

(シツ、スピ持って下ハケ)

 

【第一三場】 もう少し進んだ道

 

(ウケ、コワ、下イン)

 

(ウタ上イン)

 

ウタ「あれ、リナとレイじゃん、どうしたの?」

 

コワ「大変なんだ、今宇宙人に追われていて」

 

ウタ「え? そもそも後ろには誰もいないよ?」

 

(三人止まる)

 

コワ「助かった……」

 

コワ「そうそう、スピーカーなんだけどレイくんが持っていたよ」

 

ウタ「え、あのスピーカーはレイのものってこと?」

 

ウケ「僕のものっていうか、僕の家に住んでるっていうか」

 

コワ「でね、それが宇宙じ(んの子供的な)」

 

ウタ「あのドッキリお前が仕掛けたのか!? どうりでネタバラシがなかったわけだぜ」

 

ウケ「え?」

ウタ「流石に性格悪いぜ、もう少し早くネタバレしてくれたっていいだろ?」

(キヅカヌ、下イン)

ウケ「いや、違うって」

ウタ「だから、昨日の朝の時の返答、歯切れ悪かったのか」

コワ「やばい、宇宙人近づいてきてるよ」

ウケ「ちょ、二人とも落ち着いて」

 

ウタ「一緒に探そうって言っても参加しなかったし」

 

コワ「あー、どこかに連れていかれちゃう〜」

 

(キヅカヌ真ん中へ移動しつつ、三人は騒ぐ)

 

(シツ下インして、キヅカヌの手か何かを掴む)

 

シツ「見つけた!」

 

スピ「もう少し速く走れただろ」

 

シツ「あんたがペラペラ無駄話するからでしょ」

 

(コワ、キヅを見てウタ、シツスピを見る)

 

コワ「なんだヌウくんだったのか……」

 

(キヅ、てへぺろ的な感じでニコッとする)

 

シツ「昨日、今日と追いかけてて疲れ果てたよ」

 

ウタ「というかなんでカブがスピーカー持ってるんだ?」

 

シツ「色々あったんだよ」

 

ウケ「まあそういうこともあるよね」

 

スピ「レイもいるのか」

 

ウケ「迎えに行けなくてごめんな」

 

スピ「本当だぜ、乗り心地悪くて酔っちまったよ」

 

シツ「本当にペチャクチャよく喋るスピーカーね。ところでこれはどういう状況なの?」

 

コワ「大変だったんだよ、あの後ね……」

 

(フェードアウト)

 

【第十四場】 その後

 

(フェードイン)

 

ウケ「ということで、こいつがスピーカーの……」

 

コワ「スピーカーの?」

 

ウケ「スピーカーの……名前は分かんないけど」

 

スピ「スピーカでいいよ」

 

シツ「あんまり変わってないし、それ人間がニンゲって名乗る感じだよ?」

 

スピ「別にいいよ。俺だと分かれば。スピーカーよりはキリッとしてるし」

 

ウタ「しかし、本当にスピーカー自体が喋ってるのか? すげえなあ」

 

スピ「すごいだろう」

 

ウタ「後、一つ聞きたいんだけどスピーカに会ったことある人はここにいる人で全員か?」

 

スピ「ああ、そこのヘタレ、運搬人、ドッキリ、靴紐結び、後、レイの五人だけだな」

 

コワ「古和賀理奈だよ。」

シツ「漆田冠です。」

ウタ「宇田凱」

キヅ「……」

(四人同時)

 

ウケ「あはは、被っちゃったね。じゃあもう一度」

 

スピ「大丈夫。ちゃんと聞こえた、俺はスピーカーだからな。コワガリナにシツタカブリにウタガイだな。一人、多分靴紐結びが名乗っていない気がするが」

 

ウタ「ああ、こいつだな。こいつは木塚ヌウだよ。っておい、人の話聞いてるか?」

 

キヅ「え、ごめんボーッとしてたわ」

 

シツ「この期に及んで?」

 

ウケ「あ、もうこんな時間だ。そろそろ帰ろう」

 

(キヅ、下ハケ)

 

コワ「もう少しスピーカくんと話がしたかったなあ」

 

シツ「もう怖くないの?」

 

コワ「大丈夫だよ、だってスピーカくんが喋ってるだけでしょう?」

 

スピ「話が分かるやつだな。じゃあ明日また集まろうぜ、公園とかでも、レイんちでもいいぜ」

 

ウケ「勝手に話進めるなよ、まあいいけど」

 

ウタ「いいのかよ」

 

シツ「なら、明日は10時にうけいくんの家に集合で」

 

ウケ「それは早くない?」

 

ウタ「家の開店時間はそんなに早くないぞ」

 

シツ「失礼、じゃあ13時で」

 

ウタ「おっけー」

 

コワ「じゃあまた明日」

 

(後ろに移動)

 

(暗転)

 

【第十五場】 家with気付いてる皆

 

(コワ、シツ、ウケ、ウタ板付)

 

ウタ「お邪魔しまシザース」(サッカーのシザースしながら靴を脱ぐ)

 

スピ「ナイスシザース!」

 

ウタ「メッシ(何かしらの有名選手)だからね」(有名選手のユニフォーム見せながら)

 

スピ「ナイスメッシ!」

 

シツ「メッシはシザースしないらしいよ、というか今日は遅刻しないのね」

 

ウタ「普通に午前起きるのが大変なだけだって」

 

コワ「というかヌウくんいなくない?」

 

シツ「あ、さっき連絡したら、ごめん約束の話聞いてなかった〜って、きた、顔文字付きで」

 

スピ「顔文字つきなら仕方ねえな」

 

シツ「スピーカに顔文字が分かるの?」

 

スピ「こう、ニコッ、ピシッみたいな感じだろ?」

 

ウタ「なんか抽象的だな」

 

スピ「大体合ってればいいんだよ」

 

スピ「じゃ、レイ、俺を真ん中に持っていってくれ」

 

ウケ「ほい」

 

(ウケ、スピを真ん中に)

 

スピ「(咳払い)では、これる人が全員揃ったところで、クイズを始めます!」

 

(イェーSE)

 

スピ「今から私に関するマルバツクイズを行います。マルだと思う人は私から見て右にバツだと思う人は私から見て左に立ってください」

 

ウタ「私から見て、って、そもそもスピーカの顔ってどっちだよ」

 

スピ「じゃあそれでいいぜ、問題、スピーカの顔はどこでしょう?顔だと思う方に立ってね」

 

スピ「チッチッチッチッチチーン」

 

スピ「みなさんそこでいいんですね」

 

コワ「普通に考えたらここじゃないの?(正面)」

 

ウケ「僕もそう思う(正面)」

 

シツ「名前が書いてある方が前だよ、こっちが顔じゃない?(後ろ)」

 

ウタ「裏の裏をかいて、横長の体の向きで、こっちが顔じゃね?(上手側)」

 

スピ「正解はーそこです」

 

ウタ「どこだよ」

 

スピ「裏返したところにあります」

 

ウタ「どれどれ?」

 

(ウタ、持ち上げると底面に「かお」と客から見て逆さま向きで書いてある)

 

スピ「ということで、正解は底面でしたー」

 

シツ「あんなに偉そうな感じなのに、低姿勢なんだね……」

 

ウタ「もういいよ、もうちょい楽しいやつにしてよ」

 

スピ「後49問あったんだけどな…じゃあ聖徳太子クイズに参ります!同時になる音を聞き分けて、みんなで聖徳太子になろう!」

 

スピ「第一問です、第一問は3つです」

 

スピ「それではいきます」

 

スピ「みつりん/げきりん/ふうりん」

 

(他の四人集中して聞いている)

 

コワ「みつりん、げきりん、ふうりん」

 

ウタ「みつりん、げきりん、ふうりん」

 

シツ「みつりん、げきりん、ふうりん」

 

ウケ「みつりん、げきりん、ふうりん」

 

ウタ「こういう問題で最後の部分が全部りんになることなんてある?げきりんじゃなくて、げきちんで」

 

スピ「正解はーみつりん、げきりん、ふうりん、でしたー、ドッキリ以外正解!」

 

ウタ「最初の方だったか〜」

 

シツ「残念だったね」

 

ウタ「くそ、スピーカ二問目を頼む」

 

スピ「二問目は長くなります」

 

スピ「ミケランジェロ/アリストテレス/織田信長

 

ウタ「もう一回お願い」

 

スピ「いいぜ、ミケランジェロ/アリストテレス/織田信長

 

シツ「私は一回で聞けたよ」

 

コワ「ミケランジェロ、アリなんとかかんとか、織田信長

 

シツ「ミケランジェロ、アンジェラアキ、織田信成

 

ウタ「ミケランジェロアリストテレス織田信長

 

ウケ「ミケランジェロアリストテレス織田信長

 

スピ「正解はー、ミケランジェロアリストテレス織田信長、でした」

 

ウタ「ヘイヘーイ、何が『私は一回で聞けたよ』だよ」

 

シツ「うるさい、次は見てろよ〜」

 

ウタ「これ面白いね〜」

 

コワ「そうだね、思ったより盛り上がるね」

 

ウタ「ところでさ、スピーカ、それ、どうやってやってるの?」

 

スピ「同時に音を鳴らすくらい、余裕だぜ。俺はスピーカーだからな」

 

ウタ「ってことは、もしかして一人でカエルの歌の輪唱、できるんじゃねえの?ちょっとクイズ一回中断して、やってみてよ」

 

スピ「できるぜ、少し時間かかるけど」

 

(スピ、シュ~的SE)

 

ウケ「どうした?」

 

スピ「そろそろお別れの時間みたいだ…… あんなところに放置されていたし、壊れかけなんだろうとは思っていたが……」

 

コワ「そんな……」

 

シツ「私たち、せっかく仲良くなったのに……」

 

ウタ「これからも一緒に遊ぼうぜ!」

 

スピ「最後に人に囲まれて幸せだったぜ……」

 

ウケ「この三日間のことは忘れないからな」

 

スピ「スーハースーハースーハー(デクレッシェンド)」

 

ウケ「もうスピーカは遠いどこかに行ってしまったんだな」

 

シツ「そんなことないよ、スピーカは私達のここにいるよ」

 

コワ「そうだよね」

 

ウケ「明日、こいつをリサイクルゴミに出そうと思う、そうしたらまた部品として何かに使われて、また人に囲まれることができる」

 

シツ「粗大ゴミじゃないの?」

 

ウタ「え、違うだろ……というか、待てよ?」

 

コワ「どうしたの?」

 

ウタ「そもそも、スピーカって死ぬのか? 修理すれば生き返るんじゃね?」

 

シツ「確かに、じゃあとりあえずドライバーで分解してみようか」

 

コワ「やめた方がいいよ、変な感じになって祟られたら大変だよ」

 

ウケ「スピーカは祟ったりしないと思うけど」

 

ウタ「でも修理したとして、元のスピーカに戻るのかな? ただの機械になったり、そもそも人格変わっちゃうかも」

 

シツ「そんなことは今考えても分からないよ、とりあえずできることやってみようよ」

 

ウケ「電気店行って、店員さんに聞いてみよう」

 

(ウケ、靴履いて下ハケ)

 

シツ、コワ、ウタ「うん」

 

(ウタ、シツ、コワ靴履いて下ハケ付近)

 

(暗転)

 

【第十六場】 電気店前with 皆

 

(フェードイン)

 

(コワ、ウタ、シツ、ウケ、下イン)

 

コワ「瞬殺されたね」

 

ウタ「まさか電池式だから、電池を交換してください、と言われるだけとはね」

 

シツ「自分でやった方が早かったね」

 

ウケ「まあでも電池は新しく買ったし」

 

(ウケ、スピーカーの電池を変えるアクト)

 

スピ「……スーハースーハースーハースーハー(クレッシェンド) あれ?」

 

コワ「やった、生き返った」

 

シツ「私たちのこと、わかる?」

 

スピ「そうか、みんなが助けてくれたんだな」

 

ウタ「心配かけやがって」

 

ウケ「よかったな」

 

スピ「ありが」

 

スピ「かーえーるーのーうーたーが」

 

(スピーカーだけ歌っている)

 

シツ「そういえばここで電池が切れたんだったね」

 

ウケ「おかえり、スピーカ」

 

ウタ「かえるの歌だなんてシャレが効いてるね」

 

コワ「こうやって聞くとかえるの歌って懐かしいね」

 

(キヅカヌ、鼻歌でかえるの歌歌いながら(シンクロ)上イン、下ハケ)

 

(四人、顔合わせてフフフ)

 

シツ「こんな偶然もあるんだね」

 

コワ「ね、びっくりだよ」

 

ウタ「じゃあ、かえるか」

 

ウケ「明日からもよろしくな、スピーカ」